学校はいつも私にとって、楽しくない場所だった。
どう毎日を過ごすか、それを考えながら受ける授業はもちろん集中することなんてできなくて。
この日のホームルームは文化祭の出し物を決める時間だった。
知らない間に、出し物はお化け屋敷に決まったらしい。
私が上の空だったから、一番人気のない受付係に決まった。
でも、それで良かった。暗闇が大の苦手だから。
桐ヶ谷くんはまだ決まってないみたいだけど、残っているのはひとつしかないし後は本人に許可を取るだけみたいだから、決まったも同然。
愛依と、カップルの幽霊の役。
本番は直接見なくて済むけど、これから文化祭までの一週間二人が仲良くしているところを見なくちゃいけない。
それで仲良くなって、付き合ったりとか、するんだろうな。
嫌、だな。
「光凛!ごめんね、受付なんてやらせちゃって」
放課後。
愛依が顔の前に手を合わせながら私の所に来た。
ごめんね、愛依。
今はまともに顔が見られないよ。
「ううん、大丈夫だよ。それより早く行かなくて良いの?桐ヶ谷くん、帰っちゃうよ」
気付かれないように、普段と変わらない口調で言った。
愛依は結構鋭いから。
桐ヶ谷くんは滅多に教室に来ないから、最近一緒にいる愛依に文化祭の出し物の係の可否を聞いてもらうよう先生が頼んだ。
前までは私が一緒にいたのにな。
今ではすっかり愛依が桐ヶ谷くんの隣にいるのが定着している。
付き合っていると噂する人まで現れて、愛依もとても幸せそう。
きっと上手くいっている。