ようやく涙が止まって、成瀬くんはそのまま送ってくれることになった。
断り続けたのに、しつこく言ってくるから了承するしかなくて。
どうしてあんなに、私を誘って来たんだろう。
「はい。到着」
私の家ここだよ、と言うと成瀬くんはおちゃらけたように言った。
やっぱり軽い。
でも、今はその軽さが逆に助かっている。
沈黙とか同情とかされたら、また涙が溢れそうだから。
歩いている間も成瀬くんはずっと話してくれていた。
話の内容ははっきり言ってそこまで面白いものじゃなかったけど、おかげでまた泣かずに済んだ。
成瀬くんのこういうところが、人気のひとつなんだろうか。
「良い、光凛ちゃん?これからはどんどん甘えて良いんだからね。女の子が我慢なんかしちゃダメ。女の子はいつでも元気に明るく笑顔でいなきゃ!何かあれば俺がすぐに飛んで行って、光凛ちゃんの涙を受け止めてあげるから」
そう言って、成瀬くんは私の頭を撫でてくれた。
こんな風に自分が落ち込んだ時、誰かが慰めてくれるだけで安心する。
成瀬くん、人の心を掴むの上手いなぁ。
「ありがとう」
「クスッ。じゃあね、光凛ちゃん。また学校で」
き、き、キス!?いや、おでこだけどキスって!
やっぱりチャラいよ、成瀬くん!