成瀬くんの言っていることがさっぱり分からない。
「あ、やっぱり気づいてないか。良いの、良いの。知らないならそれで」
何それ。凄く気になるんですけど。
と言っても、成瀬くんはこれ以上話す気はないのか、地べたに座ってコンビニで買ってきたであろうおにぎりとサンドウィッチを袋から出した。
っていうか、いつの間に?
そんなのさっきは持ってなかったと思うんだけど。
「あれ、俺のおにぎりないんだけど!」
「あ!俺のサンドウィッチもねぇ!」
遠くで不良達の騒ぐ声が聞こえた。
もしかして……。
不良達からそっと成瀬くんの方に戻すと、成瀬くんは口元に人差し指を当てて「しーっ」と言っていた。
やっぱり、画になるなぁ。
って、そうじゃない!
人のご飯取っちゃダメでしょ!
「な、成瀬くんそれあの人達に返そうよ。お昼ないなら、私のお弁当少しあげるから」
そう懇願しても、成瀬くんは聞く耳を持ってくれない。
どうして私が罪悪感でいっぱいにならなきゃいけないんだろう。
「大丈夫だよ。一食抜いただけで死にやしないから」
そ、それはそうかもしれないけど……。
「それに、綾瀬さんのお弁当もらったなんて言ったら、叶斗に怒られるだろうし」
また桐ヶ谷くんの名前。
どうして、そんなに桐ヶ谷くんの名前を出すの?
一生懸命とか怒られるとか、さっぱり分かんないよ。
「さ、食べよ。あいつらのことなら気にしなくて良いから」
「う、うん」
幸い、おにぎりとサンドウィッチのことは不良達にバレなかった。