幸い、不良達がたむろしていたのは出入口周辺だけで奥の方には誰もいなかった。
「ごめんね、彼女なんて言って」
不良達の会話が聞こえない所まで来ると、成瀬くんは謝ってきた。
ほんとだよ。私が成瀬くんの彼女なんて、ありえない。
「ああ言っとかなきゃ、あいつら面倒だからさ。綾瀬さん守るにはああ言うしかなかったんだ。流石に人の彼女に手出しはしないだろうし」
え、守ろうとしてくれたの?
ずっと気になっていた。どうして正反対の二人が友達で仲が良いんだろうって。
でも、今分かった。
タイプは違うけど、二人ともちゃんと守ってくれる。
桐ヶ谷くんは無愛想だけど、昨日みたいにいざという時はちゃんと女の子扱いして私の盾になってくれた。
成瀬くんは軽くてチャラいけど、今みたいに私が不良達に絡まれないように守ってくれた。
二人とも、同じやり方で女の子を守ろうとするから仲が良いのかもしれない。
なんて、私の勝手な考えだけど。
「どうしたの?もしかして惚れちゃった?」
「違います」
こんな風に守ってくれたかと思うと、ムカつくこと言って来るのもそっくりだ。
似た者同士、か。
私はどこか愛依と似たところ、あるのかな。
「あはは。綾瀬さんって面白いよねぇ。叶斗が一生懸命になるのも分かる気がするかも」
「え?」
ツッコミどころ満載だ。
私が面白い?どこが?それに、桐ヶ谷くんが一生懸命ってどういうこと?