成瀬くんに連れられてやって来たのは、屋上。
ここ不良の溜まり場だから、あんまり来たくないんだけどな。
「光大ぁ、その子彼女か?」
「意外だな。女好きのお前ならもっと派手な子好きだと思っていたけど」
屋上に出た瞬間、私達に絡んできた不良達に思わず怯む。
だって、昨日のあの男達と話し方が似ているんだもん。
昨日の恐怖が一気に押し寄せる。
「うん、そうだよ。俺の彼女」
ぐっと肩を引き寄せられて、成瀬くんの胸に体を埋める形になってしまった。
私、成瀬くんの彼女じゃないよね?
いくら女子が見てないからって、軽すぎない?
変なこと言わないでよ!
「彼女さん、覚悟しておいた方が良いよぉ。こいつ無類の女好きだから」
「女なら見境ないもんなぁ」
不良達が顔を近づけてきて、そう耳打ちしてくる。
お、お願いだから近づかないで……。
どうしても、昨日の男達と不良達を比べて恐怖感が抜けない。
どうして同じ不良なのに、こんなにも違うんだろう。
「見境ないなんて悪い言い方。俺はただすべての女性に優しくしているだけだよ」
なんかムカつく。
将来、成瀬くんの彼女になる子がかわいそうだな。
「まぁそういうわけだから、俺の彼女にちょっかいかけないでね」
不良達の間を擦り抜けて、成瀬くんは私の腕を引っ張り屋上の奥へと歩き出した。