昼休みになり、愛依は嬉しそうに空き教室へと走って行った。
悲しいけど、凄く画になるんだろうな。
美男美女のあの二人が教室に二人きりなんて、どっかの映画のシーンだよ。
「はぁ」
溜め息を吐いてみても、誰か拾ってくれるわけもなく。
ただ賑やかな教室の中に消えて行くだけ。
なんか、嫌だな。まるで私だけ取り残されたみたいで。
みんな、私のことなんて知らないように、会話に花を咲かせている。当たり前なんだけど、何だかそれが凄く寂しく思えてきて。
自分の気持ちが分からない。どうして、愛依が桐ヶ谷くんのことを好きってだけでこんなに心が痛むのか。いくら考えたって結論が出ない。
別のことを考えよう。
何か、別のことを考えれば忘れられるかもしれない。
そうだ。愛依が彼氏と別れていたなんて、驚いたな。
愛依にお弁当を渡した時、彼氏のことを聞いたら別れたと言われた。昨日まで凄く仲が良い感じだったのに。
人間関係なんて、何があるか分かんないよね。
ほんと、分からない。今日のことだって、誰が予想できたって言うんだ。
って、結局戻っているし!
必死に首を振っても、桐ヶ谷くんと愛依のことが頭から離れない。
今頃、仲良くなっているのかな。もしかしたら、愛依が戻ってくる頃には付き合うことになっていたりして。
ありえるなぁ。愛依に好きとか言われたら、いくら桐ヶ谷くんでも一発だろうし。
何でだろう。涙出てきた。
「綾瀬さん?」