その仕草が私の鼓動を速める。
桐ヶ谷くん、私を守ろうとしてくれているの?
「彼女を守る正義のヒーローってか?カッコつけてんじゃねぇよ」
お願いだから喋らないでよ。
あなた達が話す度に、こっちは吐き気がしているんだから。
桐ヶ谷くん、一体この人たちとどういう関係なの?
「いつも負けている奴らが、調子のんなよ」
っていうか、ずいぶん余裕そうじゃない?
相手は十人くらいいるのに、どうしてこんな強気でいられるの?桐ヶ谷くん、そんなに喧嘩強いの?
「今日は違うんだよ!お前のこと、今日こそ負かせてやるよ!」
それ、弱い人が負け意地張って言うことだよね?
なんか、さっきまで怖かったのに、凄く弱い人達に見えてきた。
それほど、桐ヶ谷くんが強いってことなのかな。
「いつもそう言って負けてんだろーが」
呆れながら言う桐ヶ谷くんに、やっぱり焦りとか不安とか一切感じられない。
彼がいれば、大丈夫。
そんな気がする。
「あのさぁ、毎日こんなくだらないことしてそろそろ飽きたんだけど」
あ、飽きたって……この場合、そういう問題じゃないでしょ。
それにそんな挑発したら、余計あの人達の闘争心掻き立てるって!
「お前は飽きても、俺らは飽きてねぇんだよ!今日こそ本気で勝負しろ!」
え、嘘でしょ!ついにキレちゃった!?
こっち向かって来ているよ!
こ、怖い……。
「弱い奴らに本気なんて出せるかよ」
小さな声で呟いた桐ヶ谷くんは、だみ声の人達を受け取る体勢になった。
え、喧嘩するの?私がいるんだよ?どうすれば良いの?
「さっきも言ったけど、離れんなよ。守ってやるから」
ドキッ
こんなときに無神経だけど、桐ヶ谷くんのその言葉に心臓の鼓動が速くなった。
いつも意地悪なのに、どうしてこうやって守ろうとしてくれるんだろう。
私は桐ヶ谷くんの背中に必死に隠れた。
守ってくれている。
そんな暖かい気持ちが、私の胸を支配していた。