昔から女には苦労してこなかった。






黙っていても女が寄ってくるし、スポーツをするだけでキャーキャー言ってくる。







でも、俺はそこまで女に興味はない。
学校で一番の美女らしい藤宮愛依を見ても、確かに可愛いなって思う程度だ。










だから、そんな俺がまさか一人の女のために時間を割くなんて考えもしなかった。













きっかけは親友の光大からの誘いだった。





高校の入学式の日。




俺は光大に連れられて、隣のクラスにやって来た。
入学式早々噂になっていた藤宮愛依を見るために。










小学校からの仲である俺と光大は、正に正反対だった。
俺が“陰”なら、光大は“陽”と呼ばれるだろう。





小学校の時から男女共に人気があった光大は、中学になって色気づき始めた。
女子にキャーキャー言われると、わざとらしい爽やかな笑顔を浮かべる。
中学三年間の中で、付き合った人は五十人以上。他校の女もいた。







その一方で、俺はまったくそういう話はない。
光大には、本当に人間なのかとまで言われた。










人間でも、俺みたいな奴はざらにいるだろうに。










嫌なんだよ。
俺の顔しか知らねぇ奴にキャーキャー言われるのも、俺の性格とか何も知らねぇのに好きだとか言われるのも。











だから、簡単に女と付き合う光大が理解できなかった。
お互いのことを何も知らないのに、どうしてそんなことできるんだろうと。














だが、その考えは高校の入学式の日で一気に崩れた。