その笑顔も大好きだよ。
「親父。やっぱり俺、今すぐアメリカに行くのは無理だ」
お父さんの方に向き直り、真面目な顔で桐ヶ谷くんは言った。
「何?」
「いつか行かなきゃいけないのは分かっている。でも、せめて高校は卒業させてくれ。俺は、綾瀬と高校卒業したい」
き、桐ヶ谷くん……。
なんか、これって、プロポーズみたいだよ。
桐ヶ谷くんに抱かれた肩が、熱くなるのが分かった。
「あんな底辺の高校、どうだって良いだろ」
その“底辺の高校”に入るのに、私は中学二年生の頃から受験勉強をしていたんですが?
この人、どれだけ賢い高校に桐ヶ谷くんを行かせようとしていたの?
「どうでも良くなんかねぇよ。俺にとってあの高校は綾瀬と出逢わせてくれた最高の学校だから」
え、そ、それって……。
勘違いなんかじゃないよね?
嬉しすぎるよ。
「この子と一緒にいて、この先も一緒にいたいと思わないのか?アメリカ留学の話、なしにしようとしているんじゃないだろうな?」
もうちょっと、自分の息子のこと信じたって良いじゃない。
「アメリカには必ず行く。でも、その前に俺に時間をくれ。こいつとまだ一緒にいたいから」
ねぇ、桐ヶ谷くん。
それって告白だよ。お父さんを通して、私に告白しているよ。
さっきから、胸がドキドキして落ち着かないよ。