さっきのことを忘れられるようにって。見た目に反して優しいから。
「じゃあ、あれ」
遊園地のシメと言われる観覧車。
別に観覧車なんてシメに乗らなくてもいつでも良いじゃんとか思っていたけど、どうしても今観覧車に乗りたくなった。
夕方だし、時間的にもあと一つ乗り物に乗ったらもう他の乗り物には乗れないだろう。だから、尚更乗りたかった。太陽が沈みかけている今の時間なら、夕陽が見えるはずだから。
それを桐ヶ谷くんと見たいと思った。
「おけ」
そう短く返事して、桐ヶ谷くんは歩き出した。
え、乗らせてくれるってこと?
「何してんだよ。乗るんだろ、観覧車」
振り返って優しく笑う桐ヶ谷くんに、高鳴る胸。
それだけで、何もかも忘れて嬉しくなる。
「うん!」
今、この瞬間だけは桐ヶ谷くんにとって特別な人だって勘違いしても良いよね。
だって、夕陽に照らされた彼の顔がこんなにも愛おしいから。