ぎゅうって抱き締めてくれる、その腕が好き。
「ハナ」って名前を呼んでくれる、その声が好き。
あたしにだけ向けてくれる、その笑顔も…。
髪を撫でる大きな手も。
全部、虎太郎のだから…好き。

すごく、すごく、好き。



「…ハナ?」

「……え?あ、何?…えと、何だったっけ?」



急に黙り込んで遠くを見つめたままのあたしに、心配そうに覗き込んでくる虎太郎の顔。
ハッと我に返って会話を戻そうとするけど、いつまで経っても慣れない至近距離に胸が高鳴って上手くいかない。