「あれは狙ってやってるんだよ!!あたしから見たら朝日もじゅーぶん王子様みたいだけど!」

「はぁ?!気色悪い事言ってんじゃねぇ!」

「あはは~!!
菫さんから聞いてるんだから~!朝日がどれだけロマンチストだってぇ~!」

「お前!あいつとは仲良くするな!…それに別れそうだしさ…」

「別れそう?!何で?!」

「別に……女と付き合うのとか昔からよくわかんねぇし…。
何で人ってひとりで生きていけるのに誰かと付き合ったりするんだろうな…
結局死ぬときは誰だってひとりなのに」

降りしきる雪は世界を白く染め上げていく。
明日には止んじまうくせに、何の意味があってこうやって雪は降っていくのだろう。
その時、さくらの冷たい右手が俺の左手をぎゅっと握りしめて、後ろから顔を埋めるように抱き着いてきた。

「何するっ!」

「ひとりぼっちだったら…こんな温もりを感じて喜びを感じる事だって出来ないじゃない…。
ひとりで生きていける人なんていないんだから、皆誰かと一緒にいたいんだよ…」

パッと手を離して、引き離された冷たさ。
けれど俺の少し前を行って振り返ったさくらが
降りしきる雪がまるで羽根が舞ってるように見えて
この世に天使がいるのだとしたら、きっとこうやって慈愛に満ちた微笑みで静かに笑うのだと本気で思った。