「ねぇ見て光!ここちょー可愛くない?」

「何それ?!今度行こうよ!」

「今週の日曜日行こう!!」

「いいよ!!」

だって、さくらを見つめる光の目は優しかったし、さくらもとても幸せそうに見えたから。

「何?ウサギカフェ?ちょーくだらねぇー」

さくらの持ってる雑誌を取り上げたら、もぉーと怒った振りをしてさくらは膨れた。

「朝日も一緒に行く?!」

「はぁ?!行かねぇよ!!
動物嫌いだし!!」

「えー…寂しがりやでウサギさんみたいなのに?」

「はぁ?!」

「ねぇ光!?朝日寂しがりやさんだもんね!」

「…そうだな」

俺はただ、さくらが笑ってくれていればそれで良かったんだ。
光の隣で
でも人間はとても欲深い生き物だったから。

春が来て、夏が訪れて、そうやって1年が巡っていく中で
歳を重ねる度にさくらへの想いは薄れるどころか増していくばかりで
近くにいればいるほど、想い出が増えれば増えるほど、少しずつ想いは大きくなっていく一方で
さくらがナンバー1でONEでいる事が全てのバランスを保っていた。

高校を卒業した綾が水商売の道に入るって聞いた時は大反対して、でもそれをなだめたのもさくらで
持ち前の明るさで人に心を開かなかった綾の心を開いて、いつの間にかさくらと綾は親友になっていた。
全てはさくらが中心で回っていたんだ。だからもしもいなくなったら全てのバランスが崩れていくのを、俺は知っていた。