朝日が、わたしの頬に流れ落ちる涙を拭おうとした時、それを拒絶した。
キーケースに繋がれていたキーホルダーを引きちぎって、朝日へとそれを投げた。

「さくら!!!」

わたしは携帯だけ手に取って、勢いよく立ち上がった。
そして朝日の腕を振り切って、走り出した。

「さくら、待ってって!!」

引き留められた力強い腕。それを振り切って、朝日を睨みつける。
もう自分の中の感情はぐちゃぐちゃだった。
朝日へ対する不信感。裏切られたという気持ち。

「もういいよ!!!
それなら美月ちゃんについててあげなよ!!」

「待てって!責任は取るつもりはあるけど、美月とどうのこうのって話じゃないんだ!
俺はお前とは別れる気はない!」

「それってお金だけ払ってそのままって事?
それじゃあ朝日のやってる事って朝日のお母さんがされた事と同じ事だよ?!
それに朝日のお父さんとも同じ事をするっていう事だよ?!
自分が嫌だったのに、それを自分の子供にも味合わせるつもりなの?!」

「それは………」

わたしの言葉に、朝日は下を向いて、腕の力を緩ませた。

「付き合う前の事だって分かってる…。
あたしが朝日への気持ちをちゃんと伝えなかったのも悪かったって分かってる…。
けど、もう、朝日の顔なんて見たくない!!」