「だいじょうぶか?さくら、お店で倒れたって…」

「だいじょうぶだよ……」

お店で倒れた。
夢なんかじゃなかった。
夢であれば良かったのに、握りしめたキーホルダーは冷たかった。
じんわりと、手のひらを冷やしていく。
先に目を逸らしたのは、どっちだったのか。

朝日はゆっくりとわたしの座るベッドにやってきて、手のひらで頬を優しく包み込む。
熱い体温。ずっと、ずっと、変わらない。
やっぱりわたしの顔を、朝日は真っ直ぐに見つめるから、少しだけ安心した。
その熱い体温に触れられて、強い瞳で見つめられる。あなたの大好きだったところ、全部がわたしにとっての幸福であったのだから。

だって、わたしの頬を撫でる朝日は、こんなに優しい顔をしてる。

「美月ちゃんが………」

しかしその名をだすと、朝日の手はぴたりと動くのを止める。
そして、ゆっくりとわたしから目を逸らしていく。

「嘘だよね?」

「さくら……」

「愛ちゃんたちが言ってた、美月ちゃん妊娠してるって
美月ちゃんは朝日の子供って言ってたけど、そんなの嘘だよね。
ほんと、笑えないんだけど……」