どうしよう。呼吸が荒くなって、汗が止まらなくなる。
苦しい。苦しくてたまらない。

美月の話をするのを必要に嫌がっていた。
あの日、喧嘩をした。
自分の気持ちをぶつけないで、ただただ嫉妬だけでぶつかってしまった。
あの日をこれほど後悔した日があっただろうか。
少しだけ、色々な事が遅すぎたのだ。そのせいで、目の前にある真実を曇らせてしまっていたんだ。

「さ、さくらさん!!!」

「大変!るな、沢村さん呼んできて!!」

ふたりの声がどこか遠くで聞こえて、目の前が真っ白になった。
気づけば意識を失っていた。
気がついた時には、朝日の家だった。

いつもの見慣れた白い天井。
ふかふかのベッド。朝日のもう身体に染みついてしまった、甘い、匂い。

あぁ、そうか、わたし倒れたんだ、お店で。そう気が付くまで随分時間がかかってしまった。
そして更衣室で聞いた、愛とるなの話。全部夢だったらいいのに。いや、むしろ全部夢なんじゃないか、と自分に言い聞かせた。
全部、全部、悪い夢。