「そんなわけないよ……」
自分に言い聞かせているような言葉だった。
「さくらさん、違うんです……。
宮沢会長はずっとさくらさんを好きだったし、真剣な気持ちだったのは分かってます…。
それに美月はホストとか…色々な男と関係も持ってたから、実際のところは分かりません…」
「いや、だからって朝日の子供って事は絶対ありえない事でしょ?」
「8月だったかな……
さくらさんと宮沢会長喧嘩しましたよね?」
心臓がバクンと脈打つのを感じた。
わたしが朝日と付き合う前。
あの、ラウンジで朝日と会った時の事だ。きっとその事を言っている。
「あの夜……宮沢会長すごくお酒飲んでいて……
もしかしたら覚えてないかもしれないけど…あたしたちその飲んでるところにいて、酔っぱらってたせいか、さくらさんの事話してました。
そして、美月はその日宮沢会長とずっと一緒にいた。
酔っていたっていうのもあったし、たった一度きりだったかもしれない。
でもそういう事実があったのは本当だと思います。
そうじゃなきゃあの美月が子供なんて産むなんて言わないと思うし」
「そんなの…嘘だよ…」
自分で言っていて、声が震えているのが分かる。
「朝日が……そんな事するはず…ない……
ないよ………」