「危害を加えなくても、やっぱり怖いじゃない??
でも何をされたってわけじゃないから、警察沙汰なんてしたくないし…。
ほんとうに美月はトラブルメーカーだわ……」
女の子の愚痴を言わない由真が、珍しく愚痴っていた。
「今日愛ちゃんとるなちゃんは出勤ですか?」
「あぁ、ふたりとも出勤よ」
「あたし、ちょっとふたりに聞いてみますよ」
「いや…
さくらちゃんはあんまり美月に関わらない方がいいよ」
「え…何でですか?」
「…美月に関わってもきっとろくな事は起こらないわよ……」
これも珍しい事で、由真は歯切れが悪かった。
「でも同じ店で働いてるんだし、やっぱり心配になるじゃないですか…」
「うんうん。さくらちゃんが優しい子なのは知ってるわよ。
でも世の中には知らなくていい事も沢山あるし、さくらちゃんは美月とはあんまり関わるべきではないわ」
「はぁ……」
由真の歯切れの悪さに、納得いかなかった。
佐竹からも美月の相談を受けていた以上、気になって仕方がなかった。
それに何だかんだ言って、美月の事が心配だった。佐竹が美月に危害を加えるような人ではないと分かっていたけれど、人間なんてどのタイミングで豹変するかなんて分かんないんだから。