またフワリ、とクラゲが動く。


「クラゲになりたい。」


ぽつりと呟いた。
そうだね、と呟いた彼の顔は見えなかった。
泣いているのか、そんなことを確認する資格は私にはない。
否、どちらでもいいのだ。

ただ疲れたんだ。
一人を想って感情が勝手に動くことに。
一喜一憂して結局中途半端な自分に腹をたてることに。

のらりくらりと流される方が楽じゃないか。
たまーに自分の意思で行きたいところに行く方が楽じゃないか。
近寄りすぎると絡まっちゃうから気の向くままに毒を刺してさ。

私らの想いなんてさもどうでもいいかのように今も目の前ではクラゲ達が揺られてる。

部屋の中に佇む2つの影はただじっと水槽を眺めてた。
彼が私を抱き寄せる。
少しの間見つめあって切なくなって苦しくなった。
やっぱり君を好きにはなれない。

君がそっと目を閉じる。
私が君に毒の刺すのは容易い。
でも、このまま流されてしまった方が楽なのでは無いだろうか。

あぁ、人間って苦しい。
心が邪魔をしていろんなことを考えてしまう。


だから私は生まれ変わったらクラゲになりたい。


fin.