「髪、短くなったね。」
またその表情だ。
切なくて苦しそう。
どうして君がそんな顔をするの?
いや、多分私たちは同じ表情をしてる。
気づいてたから。
君の気持ち。
でも、答えられないから私は君の気持ちに気付かないように蓋をしたんだ。
君を好きになれたら良かった。
そしたら多分おんなじ気持ちで傷つくこともなかった。
好きな人が別の人を好きだなんて…。
「ここは人があまり来ない。だからうんと泣くといいよ。」
君がどこまでも優しくてそれに甘える私は最低だ。
君の弱みに付け込んで、だけど君のものにはならないのだから。
「海水の塩分濃度と体内の塩分濃度って実は同じくらいなんだ。ここは海の中だからどれだけ泣いても誰にもバレないよ。」
あぁ、その言葉を聞きながら思った。
彼はここで泣いているんだなって。
同じように誰にもバレないように一人で。