ぶつぶつと不機嫌そうに言っている一ノ瀬くんに、もしかして嫉妬してくれているのかなと思った。
私がしたように、一ノ瀬くんも嫉妬してくれるんだ。
私ばかりが好きなんだと思ってた。
この恋は一方通行で、彼と交わることなく終わるんだと。
でも、そうじゃなかったんだ。
「一ノ瀬くん」
「……なんだよ」
「好きです。私の、彼氏になってください」
一ノ瀬くんの切れ長の目が見開かれる。
彼が何か言おうとしたけど、それよりも前に、周囲から歓声と拍手が沸き起こったので驚いた。
そうだ。
ここは教室前の廊下で、昼休みで、人がいっぱいいたんだった。
色々ありすぎて、完全にそのことを忘れていた。
こんな公衆の面前で告白するなんて、どうかしてる!
「もう! 一ノ瀬くんのバカ!」
「はあ? なんでそうなるんだよ!」
怒りながら笑う。
一ノ瀬くんも笑っていた。
飾らずに言い合えて、笑い合える。
そういう一ノ瀬くんだから、好きになれた。
周囲の生徒におめでとうと祝福されながら、私たちはそっと手を握った。