そうだ。彼女がいるくせに、私にまで彼女になってと言うなんて確かにサイテーだ。
どうするんだ、と腕を組み頬をふくらませたけど、一ノ瀬くんはきょとんとした顔をしている。
「おい。誰が誰の彼女だって?」
「え? ……一ノ瀬くんと、森五鈴さん。付き合ってるんでしょ?」
「付き合ってねーよ! 前にも言っただろ。あいつは同じ中学だっただけ。それ以上でも以下でもない。なんでそんな勘ちがいしたんだよ」
勘ちがい? 本当に?
じゃあ、一ノ瀬くんが私にうそをついていたわけじゃない……?
「森さんの妹の方が、一ノ瀬くんとお姉さんが付き合ってるって……」
「あいつ、そんな嘘ついたのかよ! どうしようもねぇな」
「でも! 私も前に、一ノ瀬くんと森さんがキスしてるところ、見たし」
「ちょっと待て。俺と森が? そんなの一度もした覚えはねぇよ」
「本当に見たの! 1階の、階段下でふたりの顔が重なってて……」