なに、この幸せな夢は。

こんなの幸せすぎて、覚めたら悲しすぎて泣いてしまうやつじゃないか。


ひどい。でも嬉しい。


「佐倉。返事は」


優しい声でうながされ、涙がこみ上げて来る。


夢でもいいや。

そう思った時、一ノ瀬くんの背後で「五鈴!」と叫ぶ声が聞こえた。

ハッとしてそちらを見ると、森姉妹の片割れが、逃げるように廊下を走っていく後ろ姿が。


「千秋、なんで!? ひどい!」


残った妹の方が、一ノ瀬くんにつかみかかる勢いで叫んだ。


「ひどいって、何がだよ。好きな奴に好きだって言って、何が悪いんだ」

「どうしてその女なわけ!? うちらの方がずっと可愛いじゃん! 千秋と釣り合わない!」


わあ、ストレートに悪口を言われた。

でもその通りだ。

確かに森姉妹はふたりとも可愛い。

化粧は濃いけど、元々整っているのは私にもわかる。