「私がそうしたくて。一ノ瀬くんに、お弁当を作りたかった。それだけなの」

「お礼って言ってたけど、俺はたいしたことできなかっただろ。結局お前を危ない目に遭わせたし……」

「でも、守ってくれた!」


そこはちゃんと主張しておかないといけないと思って、大きな声が出た。


森姉妹がすぐ後ろにいるのが見えてギョッとする。

ふたりに、特に妹の方に睨まれたけど、ここまで来たら止められない。


「一ノ瀬くんは、ちゃんと私のこと守ってくれたよ! それに、あの夜だけじゃなくて、この1ヶ月ずっと私に優しくしてくれたでしょ」

「それは、俺がお前のこと……」

「わかってる! 一ノ瀬くんが私のこと鬱陶しく思ってるのは、わかってるよ。大丈夫」

「はあ? おい、ちょっと待て。俺の話を聞け」

「でもね! わかってるけど……わかってても、ダメだった」


自然と視線が下がり、唇を噛む。