「なんかあったのか?」
「え、な、なにもないよ??」
あきらかに不自然な嘘をついてしまった。
目をそらして、手を後ろに組み、絶対何かを隠している素振りをする私。
自分自身でも、おかしなことはわかっていた。
でも、じゃあ正直に言えって?
「告白されました」なんて、自分から言うのなんか勇気いるし……!!
でもこんなんじゃ、龍に突っ込まれてもおかしくない……。
どうしよう、なんて言えば……。
そう私が頭の中で悶々とさせている時だった。
「……そうか。」
ん……?
……あ、れ……?
突っ込まれ……ない?
あっさりと受け入れられて、逆に疑問を抱いてしまった。
そして、自分の話からそらすために、何か話題はないかと頭の中でぐるぐる考える。
そして選んだのは……
「り、龍は、今日はあれだね、翼出さないんだね……」
気になったことを、そのまま普通に聞いてしまった。
「え、あぁ……今日は、そんな気分?的な?」
「そう……なんだ」
私が龍の不自然な点に触れた瞬間、龍の態度がふと焦ったように見えた。
そして、隠すように顔をそむける龍。
龍も……何か隠してる?
……でも、私も隠し事しちゃったし……
龍にだけ問い詰められない……。
「そ、それより!」
「へ!?」
龍が突然、バッと顔を向けて、私にビシッと指さしてきた。
「……柳に何か言われても、絶対、その話に乗るな。絶対に……あいつのことを信用するなよ。あいつは……」
「……?」
龍は何かを言いかけて、言葉を詰まらせるように、黙り込んだ。
龍、何か知ってる……?
もしかして、私が告白されたことバレてる……!?
いやでも、学校内で言われたことだし、龍が聞いてるはずない……。
……っていうか私、悪いこと隠してるみたいじゃん……。
なんか、罪悪感ハンパない……。
……でもどうして、そんなに柳くんに執念深いんだろ?
「…………なんでもない。とにかく、気をつけろ。あいつには。」
「う、うん……?」
龍はふいっと背中を向けて、階段を上がっていく。
よくわかんないけど、柳くんの何かを知っている……?