「あたしも寝坊」


「嘘つけ。お前は寝坊なんてしないだろ」


家庭環境を理解している透はすぐにそう言って来た。


「うるさいな! 別にいいじゃん!」


早くあの子を探さないといけないのに、こんな所で時間を使っている場合じゃないのだ。


思わず大声になってしまった。


透は驚いた表情をこちらへ向けている。


「……なぁ、まさか悪魔山に行くつもりじゃないよな?」


そう聞かれて、あたしは一瞬言葉に詰まってしまった。


あの子の行きそうな場所ではある。


「行かないよ」


あたしはつっけんどんにそう言った。


これ以上会話をしていると、ボロが出そうになる。


「じゃあ、あたしは行くから」


あたしはそう言い、学校とは逆方向へと駆けだしたのだった。