どうにか階段を下りきったその時だった。


階段の上部から何かが飛び降りてきた。


それは真っ黒な塊で……輝久の隣に着地すると、その血を吸い始めたのだ。


「あ……」


ソレが、あたしを見上げて瞬きをする。


口の周りには血がこびりついていた。


「ダメだよ。早く、先生を呼ばないといけないのに……」


そう思うのに、食事をしているソレを見ていると徐々にそんな気が失われて行く。


もうちょっとお腹が膨らんでからでも遅くない。


食事が終わってから、ちゃんと先生を呼べばきっと大丈夫。


そう思うと、もう一歩も動けなくなってしまった。


なによりもソレの食事が大切だった。


成長して、あたしの願いを叶えてくれるのだから。


「ゆっくり食べていいからね」


あたしは無意識のうちにソレに向けて、そう声をかけていたのだった。