「その時に、碧さんに恋をしたんだ。もちろん、好きな所は全部だよ」


さらりと、お母さんの好きな所まで言ったキムさん。


「もう、そこまで言わなくても…!」


そこまで聞いて、慌てた様にお母さんが口を挟んだ。


「何でだい?色々説明して、って頼んだのは君なのに」


きょとんとした顔で、けれどいたずらっ子の様な笑みを浮かべながらお母さんの方を向くキムさん。


「そうだけど、恥ずかしいからっ…」


お母さんは、そう言いながらキムさんの方を向き。


そして私の目の前で、2人は顔を見合わせて微笑んだ。


そんな2人の様子から、2人は私の居ない間にゆっくりと少しずつ、確実に愛を育んだんだと実感する。


韓国の人はストレートに愛を表現すると聞くけれど、韓国に住んでいたキムさんもそうなっている様だ。



「それでね。…僕も実は、離婚をしているんだ」


「…聞き、ました……」


心のどこかでまだ怯えているのか、私は少し間を空けて声を出してしまった。


「で、1人子供が居るんだ。男の子でね、瀬奈ちゃんが今中3だから……瀬奈ちゃんより2つ上で、今高2かな」


事が上手く運んだら近々息子にも会えるよ、と、キムさんはにっこりと微笑んだ。