私に少しでも近づきたいのか、敬語で話すのを止めてくれたキムさん。


ラフな話し方は、キムさんの優しそうな表情を更に引き立たせた。


「僕の名前は、キム・優作。韓国の名字だけど、僕自身は日本人なんだ。えーっと、年齢は…知りたいよね、碧(みどり)さんの2個上だよ」


“碧”という名前は、私のお母さんの名前だ。


お母さんは私の事を20才で産んだから、今年で35才。


その2個上だから、キムさんの年齢は37才だ。


年齢を誤魔化して教える所からも、彼の優しそうな性格が滲み出ている気がする。


「で、僕と碧さんは会社で出会ったんだ。…正確には、僕が碧さんの会社に派遣されて、出会ったんだけどね」


後々分かった事だけれど、キムさんは韓国に住んでいた為、韓国にある日本の会社に勤めていて、そこからお母さんの居る会社に派遣された人だったらしい。


「僕は仕事柄、大人になってから長い間日本に帰ってきていなくてね。日本の会社の事が良く分からなくて困っていた時、1から教えてくれたのは碧さんだったんだ」


「そんな事…」


頬を赤くして、顔の前で手をひらひらと振りながら謙遜するお母さん。


(照れてる、お母さん)


お母さんが何かに対して照れている所を見るのは久しぶりだったから、私の心も少し温かくなる。