私の真正面に居たのは、お母さんではなく、キムさんだったから。


てっきり私はお母さんの前に座り、斜め前にキムさんが位置すると考えていたから、私は驚き過ぎて彼の顔を穴の開く程見てしまった。


彼の目は、見ずに。


「ん?」


それに加えて、キムさんが不思議そうな顔をして首を傾げるものだから。


「ひっ…!いえ、何でもないです…!」


と、明らかに挙動不審になってしまう私。


そんな私を見て、お母さんが困った様に苦笑いを顔に浮かべている。


「ごめんなさい、優作。瀬奈は人見知りが激しくて…」


(人見知り?)


確かに、そうかもしれない。


けれど、これは明らかに違う。


男の人、近々私の“父親”になる存在の人だから、私はこんな変な態度をとってしまうだけ。


それでも今日、お母さんの口から前のお父さんの話も出されるはずだから、キムさんは私の不審な行動も分かってくれると信じたい。


「ああ。いやいや、全然大丈夫だよ」


けれど今は何も知らないキムさんは、にこにこと笑って頷いた。


「それでね、あなたから瀬奈に説明してもらえる?…その、再婚の事とか、色々」


「え、話したんじゃないのかい?」


ああ、やはり2人の再婚という運命は変えられないらしい。


まあ、私やお母さんに手を上げなければいい話なのだけれど。