流石にひと回りも年上という事はないと思うけれど、やはり知っておく事に損は無い。


(お母さんはしないって言ってたけど、虐待とか、そういうのも心配だし……やっぱり、怖いな…)


もしも、お母さんとキムさんが本当に再婚したとして。


再婚後のキムさんが、実際は赤の他人である私にどれ程心を開いてくれるか、どれ程心を通わせようとしてくれるかは分からない。



けれど、何となく。


本当に少しだけ、楽しみに思ってしまう自分が居た。


無い物ねだりなのだろうか。


実際に再婚しなかったとしても、キムさんが前の父親とは違う性格である事を、“この人が父親だったら良いな”と思える様な人である事を。


少しだけ、願ってしまう自分が居た。



「はぁ…」


しばらくして家に辿り着いた私は、玄関の前に立って深呼吸を繰り返した。


(大丈夫、怖くない)


家の中には、もう既にキムさんが居るだろう。


(よし、行こう)


謎の気合を入れた私は。


「っ、ただいまー」


そう言いながら、玄関の扉を開けて中へ入って行った。



1番最初に目に付いたのは、玄関に男物の靴が置かれている事。


(あっ…キムさん、のかな…)


そう考えたのも束の間。


「おかえり、瀬奈」


「おかえりなさい」


今まで何万回も聞いたであろう母親の声と、初めて聞く男性の声が同時に聞こえた。