「ま、別にいーの。どーせ俺、またすぐ彼女できるしー」

「うわー、自分でゆっちゃう?」

「だってほんとのことだし。しょうがなくね?」

「あーそうですねー」

全力の棒読みで返した私を、和希はフンッと鼻で笑った。

ちょっと(じゃないけど)モテるからって、ムカつく男だ。

「つーか、ルリは?」

そういえば、私のことを『ルリ』と下の名前で呼ぶのは、学校では和希だけだ。

私は『小鹿』という珍しい苗字のせいで、「子ジカちゃん」とか「バンビ」なんて呼ばれてるのだ。

読み方「おじか」なんだけどね。

「ん? なに?」

「 いつになったら彼氏できんの?」

「は?」

「もう高3だよ? 放課後早々、大口開けてのんきにジャンボメロンパン食ってる場合じゃなくね?」

私の手からジャンボメロンパンをひょいっと奪い取った和希は、その大きな口でパクリとかぶり付いた。

えー、ひとくちでそんなに食べなくてもよくない? 遠慮とかないわけ? と文句を言えば、さらにもうひとくちかじってから「じゃあ食べる? 」と、口をつけた部分を私に向けて差し出す。

「いらんわ!」

てゆーか。