江藤 和希《えとう かずき》が、また彼女にフラれた。

和希は人懐っこくて、みんなに優しくて、ちょっとバカでお調子者だけど……顔だって悪くない、むしろイケメンの部類に入る。

その上、強豪と言われる我が校サッカー部のエース様だ。

故に、和希は女の子にとってもモテるし、彼自身来るもの拒まずな所もあって、簡単に彼女ができる。

でもなぜか、いつもすぐに別れる、というかフラれるらしい。

私が知る限り、最長は2週間。

今回に至っては最短の3日。

そして、和希がフラれた時に慰めるのが私、小鹿 瑠璃《おじか るり》の役目だ。

1年の時から同じクラスでもう3年目、現在に至っては席まで前後の、すっかり腐れ縁。

帰りのSHRが終わるや否や、

「ルリ~」

和希は後ろの席の私を振り返った。

「なに?」 

「3日でフラれるとか、俺さすがにかわいそくない? ルリ慰めてよー」

なんてわざとらしく泣き真似をする彼の頭を、私はよしよしと撫でてやる。

「てゆーか今さらだけど、なんでそんなすぐフラれるの? どんな付き合い方してるとそうなるの?」

「知らねーし。付き合い方もなにも、別にフツーに一緒に帰ったりとかしてるだけの段階で、毎度フラれてっからね」

口を尖らせて、和希は言った。

ところでコイツは、部活に行かないのだろうか。

「ふーん、なんか理由に心当たりないの?」

「んーまあ、なくはないけど」

「え、あるの? どんな理由?」

「それは……まあ、いいじゃん! なんでも」

普段の憎たらしいほどよく回る舌はどこへやら、なぜか珍しく口ごもり、和希は頬をポリポリと掻きながら苦笑いをした。