ユキが食事の用意をする側で、キースはテーブルにお皿を並べて手伝っていた。

 トイラもそれに加わろうと、ダイニングにやってきた。

「トイラ、もっと休んでおけ。まだ無理しない方がいい」

 キースが言った。

「肩はまだ痛みがあるけど、あの薬のお陰で、かなり動けるようになったよ。明日、学校だし、なんとか日常動作は問題なさそうだ」

「トイラ、無理しちゃだめだよ。学校なんて行かなくってもいいよ。私も一緒に側にいるから」

「じゃあ、またデートするか、ユキ」

 トイラのその誘いが嬉しかったのか、ユキは喜んで頷いていた。

 そのとき、ドアベルが鳴った。

「誰だろ、こんな時間に」

 ユキは玄関に行ってドアを開けた。

 だがそこには誰も居ない。

 しかし『ユキ』と呼ばれる声を聞いたような気がした。

「誰?」

 庭の周りの低木の茂みが、ガサゴソとしていた。

「猫かしら」

 不思議に思ってそろりと近くに寄ったときだった。

 突然後ろから誰かに肩を掴まれた。

 変な香水の匂いがする。

 咄嗟に振り返れば黒いフード付きのワードローブを着た誰じゃがそこに立っていた。

「キャー」

 ユキの悲鳴が聞こえたとき、トイラとキースが慌ててかけつけた。