ユキは家に帰ってすぐにシャワーを浴びた。仁にキスされたことは、気にしないでおこうと思ったはずなのに、トイラを見たとたん、どうしようもなく罪悪感が芽生えてしまう。

 自分が悪いわけではないのはわかっているが、どうしても汚れたような気分がぬぐえなかった。

「ユキになんかあったのか」

 トイラがユキの様子がおかしいことに気がついて、さりげなくキースに聞いた。

 キースも命の玉のことを話したことで同じように罪悪感を感じていた。

 それも原因の一つだろうと思うと正直にトイラに言えなかった。

「仁のところでなんかあったとは思うけど、他にもきっと悩んでることはあると思う。ユキの場合、月の玉が胸にあるだけに、普通の人間には考えられないことが次々起こってるしね」

 キースの言葉でトイラはソファの上でうなだれた。

 全ての責任は自分にあると全身で感じていた。

 キースも悪気があって言ったわけではなかったが、結果的にはトイラを責めてしまったと思うと、申し訳なささが倍増した。

 ふたりがぎこちなくなっているとき、濡れた髪のままユキが居間に現れた。

「夕飯の用意するね。トイラ何か食べたいものない? おいしいもの沢山食べて、早く体が自由に動けるようにならないとね」

 ユキはソファに座るトイラに、無理に笑みを見せようとする。

 不自然なことくらいトイラにはお見通しだった。

「どうしたユキ。仁と何があったんだ。帰ってきてからおかしいぞ」

「ううん、トイラが心配することじゃない。大丈夫」

 ユキはソファーに座るトイラに近づいて、そっと首に手を回して抱きついた。

「でもちょっとだけこうさせておいてね。とても心が落ち着く」

 キースは二人に気遣うようにキッチンに向かった。

「今日は僕が夕飯作ってやるよ。二人はそこで座ってるといいよ」

 キースは気を利かしたつもりだったが、トイラもユキも思わず顔が引きつる。

 また薬草みたいなものを作られたらたまったもんじゃない。

「私、作るよ」

 思わずユキはキッチンに飛んでいった。

 案の定キースは、手にこの日の朝摘んだ薬草を持っていた。

 ユキは驚いて取り上げると、キースはクスクス笑っていた。

「冗談だってば」