「またトイラったら大胆にやってくれるよな」

 キースが何かあったんじゃないかという顔で、怪しい笑みを浮かべていた。

「俺、一晩中ユキを温めていただけだよ。かなり体温が下がってやばかったんだ。黒豹だったんだけど、なぜか朝起きたら人の姿に戻ってた」

「ユキを抱きしめたいと思ったからだろうね」

「実際抱いてたから、そうだろうね」

 トイラは顔を赤らめていた。


 憤慨していたユキだったが、突然はっとした。

 何もかも思い出していた。

 初めてトイラに出会ったことも、森で過ごしたことも、忌まわしいあの事件のことも、全て思い出せた。

 ユキは風の様にベッドから飛び起きて、部屋のドアを勢いよくあけた。

 自分の胸が露になってることもお構いなしだった。

 廊下でトイラとキースが立ってお喋りしている。

 ユキが勢いよく飛ぶように迫ったので、トイラもキースも殴られると思い、思わず守りの体制で身がすくんでいた。

「トイラ!」

「ユキ、待て、早まるな。俺は何もしてない」

 ユキはトイラをあらん限りの力を出して抱きしめた。