「何がおかしい!」

 トイラが憎しみの目で叫んだ。

「気がつかぬか。この状態を作ったのは私だ。この私でも、充分にこの力を使える。さてお次はこれだ」

 トイラに手を振りかざすと、衝撃波がトイラを襲い、体が木に叩きつけられ、口から血が滴る。

 かなりのダメージを受け、トイラの息は荒かった。

 ジークはまた玉を手元に引き寄せると、時空は元に戻った。

 だが、そのとき、ジークが苦しみだして倒れ込む。

「うっ、力がはいらない。体が動かない。なぜだ」

「やはりお前には使いこなせないんだ」

 トイラはチャンスだと思った。立ち上がりジークに近づく。

 だが、何百匹というコウモリが空を黒く埋め尽くすように現れ、ジークを庇うように包み込んだ。

「この勝負、私の勝ちだ、トイラ」

 ジークは大量のコウモリと共に消えていった。

 トイラは怒りのままなす術もなく、黒くなった空を睨んで唸っていた。

「奴は、太陽の玉を使うことで、かなりのダメージを受けている。回復するまで時間を要するだろう。だがそのうち月の玉の存在に気がつくのは確実だ。そしてその時、ユキが持っていることも、いつかはバレてしまうのか。くそっ、なんとか阻止せねば」

 トイラは森の中で、力の限り咆哮した。

 それは後始末を必ずつけるという誓いを、森に知らせていた。

 これがトイラとユキの苦しい試練へと繋がる出来事の発端だった。