「森の守り主、まだ話は聞いていない。どうすればユキは助かるんですか」

「トイラ、それは森の守り主となるお前なら、わ……かる……」

 森の守り主の体がドシーンと地面に叩きつけられるように倒れこんだ。
 キースが近くに寄って確認する。

 その後、首を横に振っていた。

「嘘だろ、森の守り主が死んだ。一体どうなっちまったんだ。ユキ、お前は大丈夫なのか」

 消えかけていたユキの息がまた吹き返す。だが意識は戻らない。

「トイラ、僕達、大変なことをしてしまった。この森には森の守り主が不在だ。太陽の玉もジークに奪われた。森が秩序をなくしてしまう」

 キースが怯えて、震える声で言った。

「いや、俺がこの後始末、必ずつける。そしてユキを必ず助ける。ジークから太陽の玉を絶対取り戻してやる」

 トイラはユキをキースに任せ、ジークの後を追う。

 黒豹になって森を疾風のごとく走り抜けていく。

 ジークの匂いを嗅ぎつけ、見つけるや否や、飛び上がってジークの前に立ちふさがった。

 威嚇した、白い牙をむき出しに、顔は鼻に皺を寄せ、目は燃え上がっていた。

 トイラは怯むジークめがけて飛び掛かる。

 ジークは玉を空中に放り投げ、トイラの攻撃をよけた。

 玉は空中で止まった。

 そして時間までもが止まった。

 その時空で動いているのはトイラとジークのみだった。

 ジークは笑っていた。

 悪の笑いが、止まった時空の中で響き渡る。