「ト……イラ」
「ユキ、喋るな。森の守り主、なんとかしてくれ、ユキを助けてくれ。なんでもする、お願いだ、ユキを助けてくれ」
必死になって泣き叫ぶトイラ。
「トイラよ、落ち着け。そしてよく聞くんだ。太陽の玉はそれ一つでは力を充分に発揮できない。もう一つ、月の玉がある。月の玉を持つものこそ、太陽の玉の力を受けて充分に操れる。その月の玉は、ここにある」
森の守り主が顔を上げて、自分の首元を見せた。そこには満月のような形が浮き上がっていた。
「いいか、良く聞け、これは私の命でもある。これをユキに授けよう。そうすれば、ユキはまた命を吹き返すだろう。これがユキの体に入ったとき、月の玉は眠った状態になる。ユキがこの森で過ごした全ての記憶を一時的に忘れてしまう。太陽の玉が近づいたとき、月の玉は徐々に目覚める。胸にアザのように月の形が少しずつ現れたとき、ユキの記憶も蘇るだろう。しかし、ユキは人間だ。我々と違って、月の玉の威力にどこまで耐えられるかわからぬ。痣が大きくなる度に痛みが増す。それに耐えられずに、先に命を落としてしまうかもしれぬ。絶えられたとしても、フルムーンになったとき、月の玉はユキの体に順応できず、独りでに出てしまうだろう。その時ユキも死んでしまう」
トイラもキースも話を冷静に聞けない。その顔は真っ青で恐怖におののいていた。
「それじゃ、ユキはどっちみち助からないってことじゃないですか」
トイラが言った。
「いや、一つだけある。月の玉がユキの体にあるうちなら、助かる道がある」
「それはどうするんですか」
その時ユキは今にも息絶えそうになっていた。蚊の鳴くようなか細い声で必死に声を出す。
「トイラ……」
「ユキ、しゃべるんじゃない」
「私、トイラに会えて……よかった」
「時間がない」
森の守り主は自分の口から月の玉を出した。
白く真珠のように輝いている。
太陽の玉より小さい。そしてその玉はすーっとユキの口へと入っていった。
「ユキ、喋るな。森の守り主、なんとかしてくれ、ユキを助けてくれ。なんでもする、お願いだ、ユキを助けてくれ」
必死になって泣き叫ぶトイラ。
「トイラよ、落ち着け。そしてよく聞くんだ。太陽の玉はそれ一つでは力を充分に発揮できない。もう一つ、月の玉がある。月の玉を持つものこそ、太陽の玉の力を受けて充分に操れる。その月の玉は、ここにある」
森の守り主が顔を上げて、自分の首元を見せた。そこには満月のような形が浮き上がっていた。
「いいか、良く聞け、これは私の命でもある。これをユキに授けよう。そうすれば、ユキはまた命を吹き返すだろう。これがユキの体に入ったとき、月の玉は眠った状態になる。ユキがこの森で過ごした全ての記憶を一時的に忘れてしまう。太陽の玉が近づいたとき、月の玉は徐々に目覚める。胸にアザのように月の形が少しずつ現れたとき、ユキの記憶も蘇るだろう。しかし、ユキは人間だ。我々と違って、月の玉の威力にどこまで耐えられるかわからぬ。痣が大きくなる度に痛みが増す。それに耐えられずに、先に命を落としてしまうかもしれぬ。絶えられたとしても、フルムーンになったとき、月の玉はユキの体に順応できず、独りでに出てしまうだろう。その時ユキも死んでしまう」
トイラもキースも話を冷静に聞けない。その顔は真っ青で恐怖におののいていた。
「それじゃ、ユキはどっちみち助からないってことじゃないですか」
トイラが言った。
「いや、一つだけある。月の玉がユキの体にあるうちなら、助かる道がある」
「それはどうするんですか」
その時ユキは今にも息絶えそうになっていた。蚊の鳴くようなか細い声で必死に声を出す。
「トイラ……」
「ユキ、しゃべるんじゃない」
「私、トイラに会えて……よかった」
「時間がない」
森の守り主は自分の口から月の玉を出した。
白く真珠のように輝いている。
太陽の玉より小さい。そしてその玉はすーっとユキの口へと入っていった。