「ちょっと、あんた返しなさい」

「ユキ!」

 トイラが叫ぶ。側に行きたいが揺れが激しく立っていられない。

 ジークとユキが揉め合っている。

 ジークが揺れに足をすくわれると、二人とも重なり合って倒れてしまった。

 ユキがジークの上に馬乗りしたとき、ジークの手から玉が転がり落ちた。

 ユキはすぐさまそれを手にした。

「取りもどしたわ!」

 すぐに立ち上がり、ジークの腹に一蹴りいれるとジークは咳き込んでいた。

 ユキが森の守り主に近寄り、太陽の玉を渡そうとしたときだった。

 ジークが腹を押さえて立ち上がり、恐ろしい憎しみの形相で、ユキに向かって、手のひらを掲げて光線をぶっぱなした。

 薄暗い空間の中、その光は彗星の尾のごとく、すーっとユキの体を突き抜ける。

 ユキは立ち止まり、口からゴホッと咳をするように血を吐いた。

 ユキが自分のお腹に触れると、ねっとりとしたものが、べたっと手のひらについていた。

 その血はドクドクと、腹から湧き出てくる。

 その直後、ユキは体に力が入らず足元から崩れた。

 玉は手からはなれてコロコロところがり、ジークは素早く、太陽の玉を手にとり、勝利の笑顔でさっそうと逃げていった。

「ユキ!」

 トイラの髪は逆立ち、目が見開いている。

「ああー! ユキ! 嘘だろ、嘘だろ!」稲妻のごとく空をも裂けんばかりの声でトイラは叫ぶ。

 トイラとキースが一目散に側に駆け寄ったときは、もう虫の息だった。