「あれが、太陽の玉か。まさかこんなのが見られるなんて、僕もやっぱりここへ来てよかったよ。なんか取り越し苦労だったけど」

 キースは肩の力が抜けたのかリラックスしていた。

 太陽の玉自体は珍しいものだったが、トイラにはそれが有難いとは思わなかった。

 手に入れたところで、役立たずな代物でしかなかった。

「何が太陽の玉だ。肝心な願いが叶わないのなら、俺にはただのその辺の石ころと同じだ」

 ユキと一緒にいるためには方法はひとつしかない。

 ユキの命の玉を自分に取り入れる──。

 衝撃が強すぎる。

 森の守り主になることなど、どうでもよくなった。

 無意味なことだと、さっさと大蛇の森の守り主に背を向けたくなった。

 だがその時異変が起こった。

 ジークが太陽の玉に近づき、触れるや否や素早く人の姿になって、がしっと玉を手で掴み、ひらりと地面に舞い降りた。

「あっ!ジーク、何をする」

 キースが叫んだ。

「森の守り主、悪いですが、これは私が頂きます」

 ニヤリとほくそ笑む勝ち誇ったジークの表情。

 トイラとキースは、ジークの狡猾さに、驚きと怒りがこみ上げる。
 
 だが、森の守り主は慌てることなく、冷静さを保っていた。

 こうなることを予測していたかのごとく、成り行きを見守っている。

 ジークは玉を抱えて走り去ろうとした。

 森の守り主は自分の尻尾を上下に振り上げ地面を叩く。

 衝撃波が、地面、空気までも激しく震わせていた。

 ジークがバランスを崩したときだった、ユキはジークに飛び掛り、太陽の玉を奪おうとした。