「あっ、森の守り主。なんだ、ここでよかったんですね。私勘違いしてあっちまでいってしまいました。さて、キース、私に一つ何か言い忘れてませんか?」

 ジークはこのときばかりと、キースを見下して得意げになっていた。

「疑って、悪かった」

 キースは、プライドの高さから胸を張ったまま詫びていた。

「まあ、いいでしょう。これで信じてもらえたから。さて、森の守り主、私は使命を果たしました。お約束のご褒美はお忘れじゃないですね」

「わかっておる」

 森の守り主は大きな体をくねくねさせ、後ろに下がっていく。

 ふーと息を吐いた後、儀式のように尻尾で地面を叩いた。

 どしんどしんと鈍く振動が広がり、森の守り主の目の前で、徐々に地面が盛り上がっていった。

 三角の山のような形の岩が地面からこんもりと顔を出した。

 森の守り主の顔の辺りまで隆起すると、振動が止まった。

 何が始まるのか、みな見守っている。

 森の守り主はニヤッと笑い、そして目の前の突起に息を吹きかけた。

 すると岩が光り輝き、気がつくとそのてっぺんに丸い玉が姿を現し、強く光を放して浮いていた。

 それは野球ボールくらいの大きさで、透き通っていながら、金色に眩く輝いている。

 辺りも金色にそまり、全てが黄金のように見えていた。

 誰もが息を飲んだ。

「これが、太陽の玉」

 ジークの目は、まさに釘付けになっていた。

「そうだ、これが太陽の玉だ。この森を支配するものが持つもの。森の調和を取るためのパワーの源だ。ジークよ、これが見たかったのだろう」

「はいそうです。私は一度でいいから、これを見たかったんです。もっと近くで見ていいですか」

「ああ、使命を果たしてくれた褒美だ。許可する」

「ありがとうございます」

 ジークはコウモリの姿になり、宙を飛び、喜び勇んで玉に近づく。

 物珍しそうに遠慮がちに見ていたが、目をどんどん細めて、いつしかその目は鋭くなっていた。

 何度も玉の周りを飛びまわっている。

 キースも見上げて、その光に魅了されていた。