「森の守り主、俺が、ユキ、いやこの人間をこっちの世界に引きずり込もうとしていることが、いけないということですか」

 まだ森の守り主になれぬと聞いて、トイラはユキと一緒に入れなくなるのではと心配になってしまう。

「トイラよ、我々の世界では人間と交わることは禁じられておる。森の守り主であれ、その掟は絶対だ。だが、この人間はどうも例外らしい。我々に必要なもの備えているようじゃ」

「それでは、ユキを俺たちの世界に連れてきてもいいということですか。太陽の玉があればそれが可能なんですか」

 希望を感じ、トイラの顔が明るくなった。

 期待をこめた目で大蛇をみていた。

「トイラ、よく聞け。お前がこの人間と一緒に暮らす方法はたった一つしかない」

「それはなんですか」

「お前が、この人間の命の玉を手に入れるということだ。この人間が持つ全てのものが詰まった命の玉。それをお前の体内に取り込めば、お前の中でお前と一緒にこの人間の魂は生き続ける。だが、形は持たない。人間が人間の世界を捨てるということは、目に見える存在している全てのものをその場所に置いて、体の中の命の玉だけを取り出すということだ。太陽の玉を用いても、この人間は我々のようにはならない」

 その事実はトイラをぶちのめした。

「そんな。俺が森の守り主になっても、今のユキの姿のままでは一緒に居られないなんて。ユキの命の玉をとるなんて、そんなことできるわけがない。そんなの嫌だ」

 ユキはじっと考えていた。

 でも答えはもう決まっていた。

「トイラ、私はそれでもいい。あなたの中でも一緒にいられるのなら、私は幸せ」

「ユキ、ダメだ、それだけはできない」

「でも私はあなたの中で生きられるんでしょ。だったらそこが本当の私の居場所だわ」

「嫌だ、俺は絶対に嫌だ。ユキの命を犠牲にしてまでそんなことできない」

 トイラはこれほどの絶望感を感じたことがなかった。

 力が抜け、地面の上でヘタっていた。

 その時、ジークが戻ってきた。