「ジーク、許せねぇ」

 トイラは殺気だち、唸りを上げる。

 尖った牙をむき出しにし、興奮でねばっとした唾液が白く糸を引いている。

 猛獣のごとくジークに爪を突き出し襲い掛かった。
 振り上げた鋭いカマのようにジークの体に食い込み引き裂いていく。

 ジークは痛さに悲鳴を上げた。

 服はずたずたに、その間から血にまみれた皮膚が見えている。

「くそ、トイラ、よくもやったな」

 ジークも怒りに任せ、もてる限りの力を振り絞り、掌をトイラに向け熱い光線を放つ。

 トイラはそれをジャンプしては、ひらりとかわし、ジークの胸元に飛び込んで地面に倒し、逃がすまいと押し付けた。

 ジークの顔めがけて前足を振り上げ、えぐるように引っ掻いた。

「うっ」

 ジークは左目をやられ、血まみれになっていた。

 そしてコウモリの姿になると、トイラの押さえつけた足を掻い潜って空高く飛んでいった。

「待てジーク」

 トイラは追いかけようとしたが、キースに呼び止められた。

「トイラ、これを見てみろ。ユキの痣が半月になっている」

 キースは人の姿になり、ユキを抱き抱えていた。

 トイラも人の姿に戻ると、ユキの前に駆けつける。

 ユキの胸元のアザがはっきりと見えた。

 トイラは驚愕し、気が遠くなりそうにうろたえていた。