ジークはコウモリの姿で木の枝に逆さまにぶら下がり寝ていた。

 トイラに突然起こされ、大きく欠伸をする。

「ジーク、頼む。俺を森の守り主の所に連れて行ってくれ」

「ということは、決断されたんですね。わかりました。ご案内します」

 人の姿になり、伸びをしながら、首をポキポキならして、ジークは準備を整える。

「さあ、行きましょう」と先頭に立ち森の中を進んでいった。

 トイラはユキの手を握り、その後をついて行く。

 キースも油断はならないと、辺りを慎重に見渡しながら歩いていた。

 冬の森、奥へ入れば入るほど、閑寂さが増す。

 空は太陽の光を通さぬほどの厚い雲で覆われ、昼間なのに不気味なほど暗い。

 空気は冷たく氷のように肌を刺す。

 どれくらいの時間を歩いていたのだろう。

 森の中では、時間の流れを感じさせないほど、歪な時空にのまれているようだった。

 ユキ以外、息が乱れることなく、平然と早足で歩いている中で、ユキは頬をりんごのように赤くさせ、必死についてく。

 ユキだけ他の誰よりも吐く息が白かった。

 坂道になると、ユキはみんなの歩調に合わせられなくなった。

「どうして皆、そんなに早く歩いても、息が乱れないの」

「ユキ、大丈夫かい。ほら俺がおんぶしてやるよ」

 トイラは背中を差し出した。

「いいよ、自分で歩けるから」

 恥ずかしそうにユキが答える。

 ユキとトイラがいちゃいちゃしているのをみてキースが呆れていた。

「お前達、いちゃいちゃしてる場合か。これから何が起こるかわからないってときに」

「キース、いいだろ。ユキは俺達と違って体力の差がありすぎるんだから」

 その時ジークが叫んだ。

「あっ、見えてきましたよ」

 ジークが指差した方向を皆が見た。