「それはキースが決めることじゃない、森の守り主とトイラが決めることです。それにトイラは充分にその資格があります。その証拠に緑の目をしています。物知りなキースならわかってるはずでしょ。森の守り主は緑の目をもつものだけが選ばれるということを」

 ジークが反論した。

 キースは言い返せなかった。

 全くその通りだったからだ。

「キース、俺じゃ頼りないと思ってるな。まあ俺も、そんな大それたものに、なれるとは思ってないから、お前の気持ちもわからないではない」

 トイラが自信なく言った。

「何を言ってるんですか、トイラ。あのお嬢さんと永遠に別れてもいいんですか」

 ジークはなんとかその気にさせようとしていた。

「ジーク、どうしてそんなにムキになる」

 キースの鋭い目が光った。

「そ、そりゃ、ムキにもなりますよ。私がメッセンジャーとして選ばれたのに、その役割を果たせなかったら恥じです。私の顔も立てて下さい」

 ジークは必死に訴えていた。

 しかしそれはどうしてもキースにはひっかかるものがあった。

 トイラは今すぐに決断できない。

 それにユキが本当に自分と一緒にいたいか、彼女の意思次第だ。

 無理やりつれてくるわけにもいかない。

「とにかく今すぐにと言うわけじゃないんだろ。だったら少し考えさせてくれ」

 トイラが悩みながら、夜の森へと消えていった。

「おい、待てよ、トイラ」

 キースがその後をついていった。

 ジークは不気味なせせら笑いを浮かべながら、二人の後姿を見ていた。

 トイラが決断を下したのはそんなに遅くない時間が経ってからだった。