ユキが玄関の鍵を開けていると、人の気配を感じ、後ろを振り返る。

 そこにはキースをおんぶしているトイラの姿があった。

「あんた達、そこで何してるの?」

 ユキに気づかれ、キースはトイラから離れた。

「だって、鍵がなかったから、家に入れなかったんだ」

 キースが苦笑いしながら言った。

 そういえば、二人に鍵を持たせてなかったことを、ユキはその時気がついた。

「あっ、ごめん。じゃあ、いつからそこに居たの」

 仁に告白されたところをトイラに見られてたのだろうか。

「三十分も待たされた。どうしてすぐに家に帰らなかったんだ。あいつとどこに言ってたんだ。しかもあいつ、最後に好きとか告白してなかったか?」

 不機嫌なトイラはイラつきを隠せない。ユキも見られていて気が気でない。

「鍵を渡さなかったのは悪かったけど、隠れて見てることないでしょ。それにトイラだって、五十嵐さんと腕組んでカラオケ行ってたじゃない」

「仕方ないだろ、付き合いなんだから。それよりもあいつと何してた?」

 しつこく聞くトイラ。

「デートに決まってるでしょ」

 やけくそでユキは言い切ってしまった。

「ああそうですか、俺もカラオケ楽しかったよ。ミカとベタベタしてたし」

 トイラも聞かれてもないのに嘘をついてしまった。

「家にすぐに入れなかったくらいで、何をそんなに怒るのよ」

 ユキはイライラを隠せない。

「そっちだって怒ってるじゃないか」

 トイラも報酬してしまう。

 お互いなぜいがみ合うのかよくわからないまま、顔を見合わせる。

 その後、『ふん!』と首をわざとらしく横に振った。

 売り言葉に買い言葉。

 ふたりは無意識に抱いた嫉妬で我を忘れて言い合いしてしまう。

「ねぇ、早く家に入ろうよ。お腹空いた」 

 側でキースがおろおろしていた。