その頃、トイラはユキが心配で落ち着かず、時折足をゆすらせては居たくもない場所で苛立っていた。

 猫と犬にユキを見かけたら守るように命令をしたものの、充分ではないことをわかっていた。

 すぐにでもこのカラオケの部屋から飛び出したくてたまらない。

 天井には演出のためにミラーボールまで設置してあり、その光で気が散る。

 思わず黒豹に変身して、飛び掛りたい衝動に襲われた。

 ひたすら我慢しているだけで力がどんどん消耗していく。

 しかし、ミカの言葉で、ユキに負担をかけることを知った今、ある程度の犠牲は払わなければと、息荒く必死で耐えていた。


 カラオケについてきたのも、二人には仕方なくのことだった。

 これからもいろいろとユキに負担をかけない対策を考えなくてはならない。

 トイラもキースも上手くことが運ばないもどかしさに、頭が痛くなる思いだった。

 ミカがべったりと側にまとわりつき、トイラは鬱陶しくてたまらない。

 そしてこの女が、ユキの机の中に忠告の紙を入れたことも知っていた。

 匂いで判別できたのだ。

 ユキに敵意を持っている。

 だからこそトイラは偵察でミカと向き合う。

 ミカの落し物を拾ったのも、手伝ったのも、この女の行動を監視してたからだった。


「ねぇ、トイラ、何か歌ってよ。キースは楽しんでいるわよ」

 ミカがマイクを渡そうとする。

「オレ、ウタエナイ。 キク ダケ。オマエ ウタエ」

「私? じゃあ、トイラのために歌うね」

 勝手にしろとでもいいたげに、トイラは癇癪起こす寸前まできていた。

 目の前で手を叩いてへらへらしているキースにも、無性に腹を立てていた。

(こんなことして楽しんでる場合じゃないだろうが)

 トイラはキースを力いっぱい睨んでいた。