「ユキちゃん、この破れ方は、はさみで切られたものね。誰かに意地悪されたの?」

 仁の母親に訊かれるや否や、ユキの目に涙が溜まっていく。

「やっぱり学校で何かあったね。よかったらおばさんに話してみて」

 優しく言われると、我慢していたものが内側から溢れてきてしまう。

 ユキはシャツだけじゃなく、手紙やカッターナイフのことも話してしまった。

 親身になって、温かく包み込んでくれる仁の母親。その行為にユキは甘えてしまう。

「おばさん、ごめんなさい。初めて会ったばかりなのに、私つい……」

「いいのよ。ユキちゃん、時には弱いところがあったって恥ずかしいことじゃないわ」

 抱きしめようと手を広げてくる。

 ユキは羽根布団にくるまれた感覚で、その母親の腕の中にいた。

 香水の匂いがする。

 ほんわかとやわらかな甘いピンク色を思わせる香り。
 まるで魔法をかけられているみたいに心地いい。

 仁がドアの隙間から気になって覗いている。
 気づいた母親は手であっち行けと知らせていた。