仁といるとほんわかとしてユキの心が癒される。

 ひとりでいたら、悶々としてイライラが募っていただろう。

 誰かと一緒にいることで気が紛れた。それとも仁の人となりだからだろうか。

 ユキは仁を見つめた。

 仁は照れていたが、その直後派手なくしゃみをしてしまった。

 仁は恥ずかしそうにしていた。

「やっぱり猫だ」

 仁はビルとビルの間の路地を指差した。猫はじっとふたりを見ていた。

 一匹だけじゃなく、建物の隅や、街路樹の下など複数見かけた。

 また仁がくしゃみをした。

 犬をつれた人がユキとすれ違えば、犬は立ち止まってユキをじっと見る。

 飼い主はリーシュを引っ張るも、ユキを未練がましそうにみていた。

 いやいやながら歩き出して、ユキが振り返ると犬もユキをみていた。

 飼い主は歩きにくそうに、文句を言いながら無理やり引っ張って連れて行ってしまった。

 それが一度じゃなかったのでユキは不思議に思っていた。

「さっきから犬とすれ違うとユキのこと見ていくね……ハックシュン! また猫だよ」

 仁は鼻をこすって恥らっていた。

「この辺り猫が多いの?」

「繁華街だから、残飯をあさりにきてるのかもしれないけど、こんなに見たことないな」

 仁はまたクシャミをする。

 ユキとすれ違う犬はユキを振り返る。

『ネコとイヌと一緒に……』

 ユキはトイラの言葉を思い出す。

 猫と犬と一緒にいたら何かが起こるのだろうか。

 監視されているような、見守られているような、そんな気分になっていた。